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出典: Tariki

四畳半・冷蔵庫・ウェストポーチ

何やら三題話めいているが。

台湾に行くとびっくりするのが、道路の広さと家の大きさ・高さである。まあ日本から諸外国に行くと、大抵の国では広く大きく高いのであるが、アメリカや中国は『大陸』である。もともと使われていない土地が広大にあって、そこに数億ばかりの人間がうろちょろしているわけである。隣家は数百メートル先で最寄のスーパーは数キロ先である。

ところが台湾は日本と同じ島国だ。それも狭い。九州ほどの大きさの島に、二千数百万人からのひとが住んでいる。というと反論をくらいそう点が平地の割合だ。我が日本は山国であり、ひとが住める平野部は海岸のふちにちょっとしかないのだから。ところがどっこい、台湾なんてもっと平地割合が少ないのではないか。ご存知のように台湾は何とかプレートが太平洋に落ち込む(盛り上がるか?)境界にあり、温泉も多く地震も多く造山運動も活発な国だ。富士山より高い山が6つ、3000m超の山が200くらいもある。これで道路や家を大きく取ろうというのだから、これはもう民族の気質の問題である。おそらく中華民族の大陸気質なのだろう。

たとえば100m2の土地があり、4人の人間がいたとする。日本なら、まず公園だの山林だの自然がいっぱーい(でも住むには使えねーよ)という目的のために50m2取り、余った土地を4分割した上でさらに個人の敷地から公道だの側溝だののために『供出』させる(まあこれは台湾でも同じかもしれないね)。ひとりの取り分は10m2である。まあ私も日本人だから、日本のこれらムダスペース公園などのゆとり空間が多い暮らしは気に入っている。日本の公園は町内の公園でもそこそこ綺麗だが、諸外国で散歩していると公園らしきものもなくずーっと家 (というかひとんち) の連続、というのに辟易したりする。

台湾なら、100m2あったとしたら4人がひとり30m2ずつ取る(爆笑)。どういうことかというと、足りない20m2は、土地を二重にも三重にも使うのだ。洋服屋の奥に一般の家屋があって、店の中を車やスクーターが通過していったり(笑)、夜はその店舗前で食い物屋が営業しさらにその前に屋台が出る、なんていうことは平気でする。家(日本)の近所の駅前にもたこ焼き屋の屋台が出るが、電気は自家発電だし水道なんかは閉店後の店の前の水道を許可を取って使っているのだろう。ふつう日本でこういう営業形態は昼の店舗側に嫌がられるが、台湾ではうぇるかむである。閉店後も(そもそもいつ寝るのだろうというぐらい閉店しないのだが)電気や水道の使用料以上のショバ代が店舗側に入るのだから。

かくして、同じ面積の土地のはずなのに、ひとりの取り分は3倍も違ってくることになる。だいたい台湾の都市圏の家といえば70坪 (日本円で)1500万円で買える。日本の都市圏だと、激安中古マンションなどみつけたとしても70平米1500万円はする (新築ならその3倍くらいだろう)。注意して欲しいのが、日本のほうは坪じゃなく平米だ(笑)。

まあGDPの違いだとかいろいろあるだろうが、そもそも日本のGDPを押し上げたのはこういった人為的な狭い土地をちまちま高い値段で切り売りする行為だ。

ただし、そもそも日本人は儲けよう儲けようと思って土地を細かく気って値段を吊り上げたのではない気がする。これは私もそういう気質があるからわかるのだが、日本人は四畳半気質なのだ。狭い部屋にモノをいっぱい押し込め真ん中のコタツに座り、手が届くところにすべてのランダムアクセスしたいモノがあると安心する。万一、広すぎる土地を入手したら大きな庭を作って小さな家を建て(部屋には古い暖炉があるのよ~♪)、トイレが10畳くらいあると出るうんこも出なくなる。

これに対して台湾、というか諸外国はたいていそうだが、家を買うとすると、やってくるのはだだっ広い大きな四角い箱である。押入れも何もない。まあ日本でもワンルームマンションとかいう名の下に、こういった押入れもふすまも鴨居もない四角い部屋を売るのが流行ったことがあるが、なおかつ男性ファッション誌なんかに『シンプルライフ』と銘打って四角く広く真っ白な精神病院の病室(偏見だが)みたいな部屋にベッドと観葉植物だけ、みたいなのがお洒落とかされたことがあるが、そういうのをみると、お前まったく本読まねーだろ料理も家でできねーだろ、と突っ込みたくなる。

話が逸れたが、こういうところに住むには巨大な家具が必要だ。壁面を利用して幅3m、高さ2mもの巨大なスライド式洋服ダンスをどーん、高さ3mもある本棚を作りつけでどーん、と取り付けたりする。まあこれで実質床面積が同じになったと仮定すると、押入れというのは後から自分の思うようにデザインできない巨大な洋服だんすと等価だったりするわけで、どっちがいいのだろう、とも思うが。そもそも台湾人は、日本人がびっちり押入れに詰め込むほどモノを持たないひとが多い気がするし、日本と違って夏に冬物・冬に夏物をしまっておく必要もない。そもそも押し入れが尺寸法でデザインされているのでわかるように、人間それほど暮らしが違っても詰め込むものが違ったりするわけではないので、固定用途の押入れという家具が最初から作りつけてある日本式住居でも、それほどライフスタイルが制限されるわけではないと思う。押入れで寝る、とかいうのはまた別のはなしだ (笑)。

だからIKEAなるノルウェーの家具屋が日本にできたとき、ショウルームをみにいって、一目でこれは日本では失敗だよな、と思った。元巨大倉庫とか工場だった場所に、だだっぴろい実物大家屋を再現して、IKEAの家具を取り付けてライフスタイルを提案しているわけである。ところが日本の家はIKEAの家具を置くほど広くない(いや広い家は広いんでしょうが)。押入れの前にIKEAの家具は置けない。壁面に取り付けようにも日本の部屋は断熱材が効いたもこもこの強度がない壁で、コンクリート打ちっぱなしの壁など家の中に見当たらない。だから日本では、ふつーの本棚やカラーボックスを置けば済むとか、押入れにプラスチックのボックスでも置けば収納できるだろう、と思える場合ばかりで、売っているモノ自体に魅力が感じられない。IKEAスタイル自体がお洒落とか思うひとは別なんでしょうけどさ。さらに (本項とは関係ないが)、ネジ釘で壁面に取り付けるスタイルの家具も日本では流行らないだろう。借家は法律で弁償しなくていいとされているのになぜか穴あけ禁止で(画鋲の穴も禁止という大家がいるらしいから、そのあまりの神経症ぶりに笑ってしまう)、持ち家にまで穴を開けるのをためらう日本人は多い。

実はIKEAは台湾に先にできており、独身時代に嫁とのデートスポットであったりしていたので、その思想というか文化自体は気に入っている。ただ日本の家には合わない、というだけだ。台湾の家はここまで書いたように大陸的っていうかIKEAの家具を必要とするノルウェーの家 (みたことないけどさ) と同等に『大きな四角』なのだから、IKEAは台湾では十分、(お洒落、とかではなくて) 実用的である。

こういった、細かく空間が区切られていて、用途が指定されているものに、日本の冷蔵庫がある。

私は電器屋では黒モノ専門なのだが、嫁が白モノに興味を示すので、ときどき家電コーナーをみてまわって、その地味ながら驚異的な進歩にびっくりすることがある。日本の冷蔵庫は、実に細かく行き届いた配慮(余計なお世話、ともいう)があり驚く。それぞれのドア(そもそも観音開きだったり左右どっちからでも開いたり)を開けると内部は肉室野菜室玉子室バター室まであってそれぞれ『適温』に保たれている。内側ドアポケットにはペットボトル入れビール入れ牛乳入れマーガリン入れともすればマヨネーズ入れなんてものまであって、「俺マーガリンは食わないんだけど」とか「ビールはぬるいほうがいいんだけど」などという嗜好の違いは許されない(笑)。さらに内部の区切り棚はハンドルを回すことで上下し、冷蔵庫内に暖かい部屋があったりとか空気を抜いて気圧を下げて保存してくれる、などというびっくりメカまで搭載している。

これに対して諸外国の冷蔵庫はどうか。3ドアといえば冷凍庫・冷蔵庫・野菜室という構成で外観はそれほど違わなかったりするが、各ドアを開けると中は四角い白い箱である。どーんと大きな冷凍庫・冷蔵庫・野菜室があって、それで終わりである。区切り? 何それ冷凍食品は積み上げればいいじゃん、後で100円ショップで何か買って仕切りにすればいいじゃん? という発想である。

冷蔵庫のはなしではどっちもどっちである。私は、ときどき使いもしないマヨネーズ室(うちのにはないけどさ)のような、余計なお世話に腹を立てることがあるが、どちらかというとこの日本的驚異の神秘が大好きである。だが、細かく区切られていて用途指定なことに困ってしまうものには、ウェストポーチがある。

私はウェストポーチを常用している。中身はまあつまらないもので、ライター灰皿文房具ティッシュウェットティッシュ計算尺ノギス万能工具目薬コンタクトレンズケース予備コンタクト胃薬ビタミン剤SD CF micro SDが32GB分、とかいったよくあるものではあるが (ねーよ)、旅行で使っていて (これに旅券・航空券や小型カメラとか重要なものが加わる) 便利だったので、旅行のとき以外でも常用しているのだ。というか、常用していないのにいきなり旅行のときに装着しても、モノを失くす原因になるだけだ。

んでこういったものを入れるウェストポーチを日本で探そうと思っても、なかなか気に入ったものが見つからない。東急ハンズなど気の効いたものを扱っている店を数店回って二ヶ月くらい探しても、なかなかないのだ。理由は、ポケットが小さすぎて、ともすれば(用途指定なのだ)細かく区切られすぎで、入れたいものが入らない、ということなのだ。

これが台湾(香港もそうであった)の夜市に行くと、5分で便利、すげー、これいいよ、というモノに出会えるのだ。もともと台湾の夜市などでは老板(店主)がウェストポーチに現金を入れて保持していることが多い。そんな夜市で『使えねー』ウェストポーチを売っているわけがあるだろうか。いや、ない。

こういうウェストポーチでは、メインの部屋が大きすぎて文房具などはそのまま入れておくとばらばらになりがちだが、そこはそれ、100円ショップで売っている(またかよ。でも本当だ)ジッパ式の小袋で仕分けできる。

まあこんなふうに、細かく区切り用途指定文化のほうがいいのか、大きな四角い部屋文化のほうがいいのかはケースバイケースだが、やはり私は日本人だ。四畳半に萌える。