Wow:gc:2010-9
出典: Tariki
大阪ツアー・または『ひとはいくつのキャッシュを置けるのか』
もう9月も終わりなのだが、今月は先月と打って変わっておとなしく近所でジオキャッシングしていたような気がする。その中では2つほど特筆すべきことがある。
ひとつはおなじみのマイルストーンだが、600を越えた(9月26日)。500を越えたのが台湾にいたときだから、やっぱり1ヶ月ちょっとで100ほどであるが、以前より力んでがしがし取らなくても、自然に一月100取れるようになった気がする(GB病か?)。
もうひとつは、大阪に行ったことである。仕事 (『G社』では『副業』という)で足掛け3日の大阪出張があったからなのだが、ちょっとだけジオキャッシングしたのが2日、半日予定を空けて回ったのが1日である。このうち2回はレンタサイクルを借りて、ちゃりちゃり回った。レンタサイクルが充実している、というより、大阪は自転車社会である。自転車のまま市場や繁華街のひとごみや大阪城本丸に突っ込んでも誰も何も言わない (というかそれが許されている)、あちこち停めやすい (というか大量の自転車置き場がある)、などというのは、やりやすいものである。大阪のおばちゃんの『自転車用傘アダプター』は有名であるが (実際一日は雨天にあたって、これが欲しくなった(笑))、レンタサイクルを2回借りたうちの一回はブレーキが「きーきーきー」と鳴りまくるもので、これを使うと人ごみでもひとがどいてくれる、というのもよろしかった(笑)。
そんなこんなで、延べ34 foundもさせていただいた。なお13もDNFがあったのだが、かなりの部分はロストだったので、まあ精神的には気持よく取れたと思う。結局50近くのキャッシュを回ったことになるのは、強大な自転車の威力のおかげもあるのだが、実はそれほど急いで取ってはいない。半日をジオキャッシングに充てた日でも私の徒歩の1日found記録に及ばないくらいである。その代わり、ゆったりと観光を楽しんだ。途中で美術館に入ったりいろんなものを食べたり、大阪城などは(いまだかつてこんなに本気で城をみたことはない、というくらい)仔細にみてまわった。
これもキャッシュを名所に設置してくださったオーナー諸氏のおかげであり、やっぱりジオキャッシングは数を取るのもいいけど、それで連れて行ってもらったついでにそこの観光を楽しみましょうよ、という思いをますます強くした。
さて、この大阪で特筆すべきはShin.jpさんのキャッシュである。というか、やたらShin.jp印のキャッシュが多いのだ。という噂はかねがねうかがってはいたのだが、まさに行く途中の新幹線の中で (暇つぶしに) このShin.jpさんと一部のジオキャッシャーとの確執めいた話を読んでから大阪に到着してしまったのだ(笑)。
まあこのはなしはここで隠してもしょうがないはなしであるのだが、「なんだよいまさらあの話を日記なんかで蒸し返しやがって」と思われるのを承知で書くと (まあ私の日記は無神経なのがウリだ(笑))、どっちもどっちかなー、というような、いわゆる社会に二人以上人間がいたら起きる軋轢のようなはなしである。別にいまは落ち着いていると思うし、私はShin.jpさんも尊敬しているし敵対派閥の方々もたぶん仲が良い(笑)から、私にとってはどうでも良いはなしなのだ。
だが、その経緯をネットでざっと見た瞬間には、Shin.jpさんは(先日来ここで書いている)『電力線キャッシュ』のひと、つまり質より量なのかな、と思ってしまった。なにせ隠した数が(2010年9月現在)約350。日本ではダントツである。
ところが、大阪に着いて着いた半日回って驚いてしまった。確かに隠し方やコンテナは凝っていない (それが一部ジオキャッシャーの気に障った・というかそれを指摘されてShin.jpさんが怒った、というのがトラブルの概略である)。だが、観光ガイドとしては一級なのだ。
常々わたしも日記で書き散らしているように、キャッシュを置くからには『名所』に置きたいと思っている。ガイドブック的な名所でなくても、B級名所でも、そこに行くとちょっとニヤリとしてしまうようなネタ名所でもよい。その選び方が、実に上手なのである。もちろん大阪は歴史のある街だからほんとうの名所が多い。それについてくまなく押さえてあるだけではなく、ちょっとした名所も実に良くカバーしてある。
だから大阪でジオキャッシングしているときは、コンテナそのものを見つけたり(アイテム交換したりetc.)という付随する作業より、キャッシュからキャッシュに行くこと自体が楽しかった。また、キャッシュがテーマとしている施設やその周囲も観て回った。
さて大阪のキャッシュをほめるのはここまでにしておく(笑)。こんかい、Shin.jpさんなる人物を認識して思ったのは、『ひとはいくつのキャッシュを置けるものだろう』ということである。
私もジオキャッシング熱が再燃して100、200、……と取るようになって、さらに置き始めたりもして、この『取る』:『置く』の比率はどうなるのだろう、と思った。まあ私が最初の10個くらいのコンテナを置いたときにはまだ、キャッシュは百いくつしかとっていなかったわけで、10:1とか20:1くらいなのかな、と思っていた。あとでbrightkiteできいたはなしであるが、日本のジオキャッシングの黎明期には元祖GBの方々が「10:1、悪くても20:1だよね」などと語らっていた、などというはなしがあったらしいので、これはあながち誤っていないと思う。
ところが日本でもその気になれば1000、2000取れるようになってきて、この状況は一変していると思う。だいたい、わたしが2000 foundするのがいつになるかわからないが、その時点で10:1といったら、キャッシュを200個置いていなければならないことになる。現在の1000オーバーのGBの方々だって、私より数置いていない方々がいっぱいいる (この日記はそういう方々を責めるため(笑)に書いているのではない、念のため)。
だいたい『黎明期』と上で書いたが、そういう時期には現在キャッシュ天国の首都圏などでさえ、キャッシュを増やす必要があったと思う。たとえばその地域に10人しかアクティブキャッシャーがいなくて(他から全然置きにも取りにもくるひとがいないとして)、ひとりが10個取ったら1個は置かないと、このソサエティは成り立たない計算になる。
ところが現在は、まだ日本では認知されていない遊びとはいえ、各地域のGBの交流が盛んであるし、まして東京都内 (大阪も中心部はそうであった) にわんさか外国人が来る状態になっている。あ、逆か。ある地域のジオキャッシャーが置かずとも取れるためには他地域に行かないといけないんですね。まあともかく、首都圏を中心に巡ったとしても、30:1とか50:1でももうこのジオキャッシング社会は成り立つ状態になっている。新人も劇的に増加してきた。
これが日本でも地方都市に行くと状況は一変する。私がキャッシュを取った・または直接交流があるだけでも、(大阪が地方としかどうかわからないが)大阪のShin.jpさんをはじめとして、秋田のtuck & greenさん、仙台のtmiyaさん、甲信のbun34さん、新潟のmorizoさん・Riechin200xさんなど、『ひとりでその地域を背負っている』のに近い方々がいる。found数は(失礼ながら)たいしたことないとしても、地域のキャッシュを置きまくって設置数が3桁、比率でいったら3:1か? くらいの方々が多いのだ (んーでもfound数もものすごいひとも混ざっているなあ(笑))。
じつはfoundの統計を見始めて気づいたのが、ソウル(韓国)のJiho Kimさんである。この方は (2010年9月現在) found数が2300オーバーという堂々たるGBであるのだが、置いている数も凄い。1000以上のキャッシュを置いていて、2000オーバーの超GBにしてその比率2:1かよ!? という強者である。韓国(特にソウル近辺)はジオキャッシングがさいきん盛んであるが、ひとえにこの方の影響が大きいと思う。
これらの地域は特にジオキャッシャーが、「そのために行く」という効果が最近顕著である (いわゆる『GBホイホイ』である(笑))。これがジオキャッシャー1万人時代にでもなったら明らかな経済効果が期待できるのだから、地方自治体もこういった方々にでも援助をすればよいのに、と思うのだが、実際は逆で、職務質問を恐れながら夜中に細々とキャッシュのメンテをやっている状態なのである。
さておいて。こんなわけだから、私も10:1や20:1をキープするならキャッシュを3桁とか置かなければならない、なんてことはおそれず、もっとがんばって置かなければならないのになー、と思えてきた。だが現実問題、キャッシュを取るのは取ったら取りっぱなしで構わないが、置いたキャッシュは責任持ってメンテしなければならないわけで、その数の限界っていくつなんだろうな、と思う。
まず覚えていられるかどうか。これは1000とかになったら私もよくわからないのだが (なにしろ現時点で600オーバーである)、いちおう600くらいならキャッシュはどこにあって・どんなコンテナで・どうやって隠しているか、というのを大体、覚えている。自分で苦労して探したからであるが、もちろん自分で苦労して製作し・測位し・メンテしているキャッシュなら、もちろん覚えているだろう。この点では200以上になっても大丈夫そうである。
つぎにメンテにどのくらい時間を割けるか、ということである。いちおう、オーナーの気構えとしては『近所を通ったら様子を見に行く』くらいのことは必要だと思う(実際設置数が30くらいのいまは、これは(だいたい)できている)。だが、100ともなると『わざわざ』みにいかないといかない、というキャッシュも出てくるだろう。こうなると、キャッシュがどれだけ『メンテナンスフリー』か、ということが問題になる。
『メンテナンスフリー』というのは、サーバなどを管理するときには必要な概念である。そりゃPCのようにべったり張り付いて毎日使っているコンピュータなら、いくらでも手は掛けられる。しかし10台とか100台のサーバを管理するようになってくると、集中して記録をみたり、一斉にメインテナンスをかけられる、ということが必要になってくる。
キャッシュも同じことで、実はマグられないということが前提であれば、調子が悪い(磁石が剥がれたとかログが濡れているとか)ということは、訪れたひとが『Need maintenance』という警告を出してくれる (ことになっている)。そしたらそのとき飛んでいけば良い。マグられたかどうかというのは、DNFが連続しているとか、最終foundから何日経ったかである程度、気になるキャッシュを一覧できる (ただしgeocaching.comのオーナ記録が不便なのは、owner maintenanceとかwrite noteで『ありましたよ』という報告がこの最終foundの部類に含まれないので、さいきんメンテしたキャッシュでもしばらくfound記録がないとぱっと見、マグられたかな? と思える表示になってしまう)。
そういう意味では、やはり100や200くらいのキャッシュは管理できる状態になっているのかな、と思える。たとえば私もひとつの経路上にある自分のキャッシュなんかだと、10個メンテするのに1~2時間でできちゃったりするわけで(何しろ捜す手間がないからほとんど移動の時間である)、もし1年間メンテナンスフリーのキャッシュが100個あったとすると、1年365日のうち10日ほど1時間割いて10個のキャッシュのメンテをすればよい。実際にはやたら手間がかかるキャッシュがあったりするから、そうはいかないのであるが。
だがやっぱり1000とかになると、まず1日10個のメンテが一巡するだけでも100日かかる(爆笑)。ログや一覧でみてマグられたり状態が悪いキャッシュがあっても見過ごしちゃうんじゃないかと (そもそも1000とか所有キャッシュがあったら、オーナーに飛んでくるログだけで一日100以上になっちゃうんじゃないかと)。上記のJiho Kimさんに会う機会があったら、ぜひそのへんのことをきいてみたいと思っている。
さてさて、最後に私も600 foundを超えて、上記のレコードでお分かりのようにトップ50に食い込ませていただいた。奇しくも設置数を並べ替えてみたら、設置数でも現在(29設置)日本で57位くらいになっている。だから比率が問題なのではなくて、その地域(日本ということであるが)でのfound数順位と設置数順位がだいたい一致していればよいのかな、なんて甘えたことを考えてしまった(笑)。
なんつってねー、私の設置数29って別に横浜だけじゃなくて4つは秋田だし、あろうことか5つは外国だしねー(笑)。
Google Mapsは『いけない道具』なのか
brightkite仲間であるDさんから、ある日問題が提起された。「Google Mapsを使わなければ探せないところにキャッシュを隠すべきではない」というのがその要旨だ。
なおgeocachingのルールでは、『Google Mapsを使わなければ探せない』キャッシュというのは禁じられている。descriptionからそれが読み取れなくて査読を通っちゃったとしても、それはいけないキャッシュ、ということになるのだ。
まあ何のことはない、(おそらくだが) この前後にDさんが、都市型の (ビル陰などで) ぴょんぴょん座標が飛びまくるキャッシュに悩まされた、ということなのだろう(笑)。こういう場合、私を含め多くの(日本の)ジオキャッシャーは、Google Mapsを併用したりする。中には (『隠すコツ』だったかの、別のまとめページにも書いたが) Google Mapsだけで隠された (隠してGoogle Mapsから座標を求めた)キャッシュを、探すほうもGoogle Mapsだけを頼りに (周辺物と見比べながら) 見つけちゃったりする。これは本来のジオキャッシングの遊び方と違うからやめましょう、ということだ。
私もタテマエ論としては同意する。これまたよそ (『探すコツ』だったか) に書いたかと思うのだが、ジオキャッシングはGPSを使った遊びなのだから、たとえ上のようなことができるとしても、いちおうGPSレシーバを持って出かけて、いちおう近くに行ったら電源を入れてポインタが指す方角をみて、Google Mapsなんか横目で見ながら場所を把握したとしてもいちおう「GPSレシーバではあと4mなんだがなあ」などとつぶやきながら宝箱を取り出す(笑)のが美しいと思っている。要は美学、というか、筋を通す、というか、その程度の問題だと捉えている。『一通りキャッシュを探すまでヒントをみない』などと同じような、自分に課したポリシーの問題だと思っている。
ところがDさんの論調はもうちょっとハードである。日本人は平均的にiPhoneとかAndroidとか使いすぎで、世界からキャッシュを探しに来るひとの中には、地図が表示できない、いわゆるGPS単体機を使っているひともいるのだから、こんな座標がぴょんぴょん飛びまくるビル境界とかには隠してくれるな、と (ちょっと大げさ・厳しい口調で書くと) そういうことである。
これには私も考えさせられた。そもそも私のキャッシュは主に都市部のキャッシュである。座標がぴょんぴょん飛びまくるビルの谷間のキャッシュなんか撤去してみたら、半分も残らなくなるかもしれない。先月台湾で隠したのなど (あまり書くとスポイラーになるが) GPS電波が届かないであろうところにまで隠した (これはジオキャッシングの規定上認められるはずがないのだが、すんなり認められた。GPSrを使って位置を特定しなければならない、とある工夫をしたからである)。
私はそもそも、『使えるものは何でも使う』主義である。だから、ジオキャッシュはGPSrだけでなくても探してよいと思っている。(アウトドアで3Gとかで) Google Mapsを使ってはダメ、といったら、プリントアウトして地図を持っていくのはダメなのか。国土地理院の5千分の1の地図はダメなのか。GarminのeTrex Vistaなど単体機のくせに電子地図を内蔵しているのはダメなのか。スポイラー、ログ、brightkiteや非公式掲示板などの情報を使ったらずるくないのか。そもそもパズルを解くのに、Google先生やあまたの解析ツールに数値計算ソフト、あげくのはてに娘・弟・友人連中を使って (爆笑) 、這いつくばってでもキャッシュに辿り着き蓋を開け、涼しい顔でTFTC!! と書く。これがジオキャッシャーじゃないのか。とまで思っている。
だいいち、(これはDさんへの文句ではなく、ジオキャッシングのルールでGoogle Mapsが必要、ということが禁じられている、という点についてだ、誤解なきよう) ジオキャッシングは『GPS単体機』だけを使う遊びって、そう思ってるの? とききたい。現在のGPSレシーバというのは、生のGPS情報ではない。GPSというシステムそのものの改良はなされておらず、(0) 生のGPS衛星からの情報だけを基に計算した座標など、いまでも10m以上の誤差があり、とてもジオキャッシングという遊びには使えないはずである (……半径10m以内にキャッシュがポン、と置いてあるだけの野っぱらとかでない限り)。
ではどうして『近年のGPSは精度が上がってきた』のかといえば、(1) GPS受信機部分の感度が上がった (2) 計算アルゴリズムの工夫・信頼度が低い情報を棄却する方法など、(3) DGPSによる補正・大気層などに起因する誤差を打ち消す情報を、データ通信(高額のGPS受信機でないとムリ)やFM電波(これはカーナビに多い)、WAAS/SBAS衛星(Garminの単体機などでは利用できる)を通じて受信し補正する、などの工夫がなされてきたからだ。これでもまだ数mの誤差があるはずであるが、現行技術だって (4) ヨーロッパのGLONAS/GNSSをGPSと同時に受信する機器 (=RTK、測量用である。数百万円する(笑)) を利用すれば誤差数cmまでおさえることができるし、先日打ち上げられた『みちびき』のQZSS技術をGPSと併用すればこれまた数cmの誤差で測位できる。
だから、『ジオキャッシングはGPSrのみを使って宝を探す遊びである』といったところで、生のGPS情報に近い精度の悪い受信機を持っている人から、(まああり得ないが) RTK GPSrを持ってうろうろするひとまでが混在するとすれば、それほど平等なものではないと思えるのである。日本人のかなりのジオキャッシャーがスマートホンでGoogle Mapsを利用し、外国人の多くが『単体機GPSr』しかもって来ないから、後者には不利で不平等になる、といっても、(0) レベルと(3)レベルのGPSrの間だって同じくらい不平等はあると思えるのである。
ちなみに、きょうび単体機GPSrを買ったら、多くは(3)レベルまで進化しているであろう。実はAndroidやiPhoneのおまけGPSrそのものの精度は(1)または(2)レベル、おそらく10年前の単体機GPSrのレベルであろうから、Google Mapsが使えないところでは有利不利は逆転してしまう。そういう意味でも別に不平等はない。
もし将来、GPSシステムで読み取った座標をもとに、AIが勝手にGoogle Mapsと周囲の風景を画像認識してと突合せを行ない誤差を修正してしまうような単体機GPSr (それでも緯度・経度しか表示されない(爆笑)) が登場し、ほとんどすべてのGPSrに搭載されたらどうなるか。つまり今現在、人間がスマートホンでオンラインのGoogle Mapsをみながら宝箱に辿り着いているのと同じ作業を機械がやる時代がきたらどうなるのか。それでもGoogle Mapsを使わないと解けないキャッシュはいけない、とルールに書けるのだろうか (何をそんな屁理屈を、と思うかもしれないが、じっさいカーナビなどではGIS情報 (道路位置など) を利用して座標に修正をかける機械は、かなり前からある)。
それからもうふたつほど書き散らしておきたいことがある。ひとつめは、私個人にとってはGoogle Mapsにたどりつくまでの道のりというのは、いかに『緯度・経度』という数字と『地図』の情報を結びつけるか、という戦いであったといっても過言ではない。もともと小学生くらいから地図マニアであった私は、生の緯度・経度がわかるGPSというものが登場したとき、狂喜した。ただし生の緯度・経度にはなんら社会的な意味はない。そこにあるのは単なるバーチャルな数字としての情報であり、これが現実の地図と結びついて初めて、社会 (このハナシの流れではジオキャッシング) で利用できるものとなる。
だからとにかく、超小型ラップトップPC (東芝Librettoを皮切りとする) にGPSrからのNMEAを食わせ地図を表示させるプログラムは探し・買い・使いまくった。なければ自分でも作った。2000年頃には自分で切り出したビットマップ地図を食わせられる単体機が登場したりして、それでもたった2km×2kmの地図をなんとか1時間もかけて切り出してダウンロードした。Garminの単体機で利用できる地図フォーマットも自分で好きなものを食わせられないか、ハックしたりGarminに問い合わせた過去もある(いまでは明らかになってしまってハックするソフトもらくらく利用できるようだが)。
おそらくGoogleにも同じようなひとはいたのだと思う。そういうひとびとが、その戦いの果て (おおげさ……でもないつもりなんだが) に辿り着いたものが、きょうびのGoogle Mapsをはじめとするオンライン地図なのだから、のほほんと緯度・経度だけを表示できるレシーバだけで遊んでいるひとは、(言い方悪いけど) 私と同じ道をたどってみて欲しいのである。
それからもうひとつは、いわゆる緯度・経度しか表示できないような生GPSrで遊べるような野っぱらと比べて、都市には大きなハンデがある、ということだ。たとえばジオキャッシングだけに限っていっても、野っぱらの半径10mには(おそらく)キャッシュを隠せるところはそれほどあるまい。都市の半径10mといったらそれはそれはもう、キャッシュを隠せる可能性があるところはありまくりなのである (ここでは野っぱらはアンモ缶みたいなレギュラー、都市ではフリスクケースみたいなマイクロを念頭に置いているが、マグられない・探すのに現実的である、という基準で揃えるならば、何も大きさを同じくして比べる必要はない)。
また野っぱらはどっちから近づいていってもOKであるが、都市部ではアプローチを間違えるとたった10mあちらにあるのが分かっているのにアパートがどんと道を塞いでいて、町内を200mくらいぐるっと巡って行かなければならない、などということがある (野っぱらでも例外的に崖の境界・川の反対側などはそういうことはあるけどね)。だからアプローチの時点から地図を見るのは必須である。Google Mapsがなかったとしたって、住宅地図を用意するであろう。逆の言い方をすれば生GPSrだけではとてもジオキャッシングという遊びができないハンディキャップがあるから、Google Mapsという手段を併用してはじめて平等になるのではないか、ということだ。
なお野っぱらと書いたが、少なくとも日本ではGoogle Mapsの細かさのレベルが都市部と田舎では違う。これは、やはり田舎のほうが『解像度』が低い、ということ (つまり上で言っている、半径10m違ったらどうなるか、の問題が小さい、ということ) だからだともいえる。また大自然の中でも野っぱらと森は違う。森は隠すところは多いわ、GPS電波は届かないわ、という、都市と同じようなハンデを背負いながら、Google Mapsが使えない (解像度の問題もあるが、葉っぱに覆われていて目印がないからである)。このハナシの中では最悪の部類に入る。
で、話を元に戻すと。日本の多くの『ハイテク機器を自由に使える』ジオキャッシャーが都市部に隠した、Google Mapsを使わなければ探せないようなキャッシュを、生に近い単体機GPSrだけ持ってきて探すひとに配慮はいらないのか、というと、これは配慮は必要だと思う。だが『野っぱらでジオキャッシング』と『東京都心でジオキャッシング』ははっきりいって全然違う遊びである。後者をジオキャッシングではない、といって禁止するよりは、descriptionなりアイコンで『都市型キャッシュ』ということが分かるようになればいいのではないか、ということである。
だから現状で、『Google Mapsが必要』とdescriptionに書いたら査読を通らない、というのには大いに不満がある。アメリカでもニューヨークとかはどうなのかよく分からないが、少なくとも東京や台北で私は『都市型』を区別した上で認める必要性というのは感じた。だからこれは、ジオキャッシングという遊びのルール側が、時代の変化に応じて変わっていくべきなのかな、と思う。ちょうど、DGPSが『ふつうの単体機GPSr』にふつうに搭載されるようになって、皆がそれをふつうの単体機GPSrだ、と認識する時代になったように。
ジオキャッシング天国
8月末に帰ってきてからは、仕事で忙しかったり、旅行で疲れたり腹を壊したりしていて、しばらく (といっても4日ほど) なんかジオキャッシングをする気力がなかった。週末にちょっとだけ、品川台場で取り残したのを取ったり、留守中に新設された自由が丘あたりのキャッシュを取りに行った。
ちょっとだけ、とはいっても、1日目は14時くらいから動いて日没ちょっと後までに9F 1DNFだったし、2日目は15時から18時くらいまでで結構2、3駅離れたところのキャッシュを2F 1DNFだった。台湾にいたときには、毎日ちょびっとずつ2つとか3つずつ取っていたが、それにかなり時間がかかった (自転車を使った日でもそうである)。それに比べたら、やはり日本の、特に東京近辺というのは、まったく足が公共交通機関だけ、という私でも、一日10とか20楽に回れる。天国のような環境である。
これには、東京の(世界でも類を見ない)発達した交通網のおかげもあるのだが、なんといってもそういう環境を作ってくれた先人GBたちの恩恵を忘れてはならない。もちろん、最近もどんどん(私を含む)新人による設置は増えているのだが、そういった新人が増えるということは、キャッシュがある程度あるからなのだ。つまり、キャッシュがないとジオキャッシャーは増えない。ジオキャッシャーが増えないとキャッシュが増えない。キャッシュがある程度、個人で置ける数を超えて増え続ける状態になるのは、臨界状態を超えないといけない。ウランの塊をある程度以上まとめて置いておくと、核崩壊が核崩壊を誘発して一挙に核分裂が増大する(原爆・原発の原理だ)。この臨界状態を超えなければ、安定したジオキャッシング天国はできないのだと思う。
アジア近隣の都市をいろいろみてみると、日本はまだ地域差があるものの、いったん近所にそういう『天国』が構築されると、周辺都市くらいまでには拡がると思う (たとえば東京なら神奈川埼玉千葉はもちろん、茨城群馬くらいまではGBが生まれる範囲になるだろう)。韓国も、ソウルがいま臨界を超えた状態にあると思う。
逆にまだまだな地域というと、中国・香港・シンガポールなどがある。これらの地域はランキングでみてみると、トップの方々は1000オーバーのGBだったりするのだが、その多くは例えば、アメリカに留学なり仕事なりでいって稼いできた数であって、設置数は大したことがないので(つまりその国ではまだまだ多くないということだろう)、崩壊したGB (いろんな意味で(笑)) はいるんだけど他のジオキャッシャーを崩壊させるほどの状態が出来上がっていないのだ、といえる。また香港などは外国人の『バケーション』設置者も多いようなので(よくわからないが)、安定して定住の香港人が香港人を核分裂させる状態になっていないのだろう、と伺える。
そこのところ、台湾は非常に微妙である。トップの方は海外経験があるようなのだが、2位以下というのは純粋に国内でジオキャッシングを始め、成長しているようなのだ。ところがどうも、ジオキャッシャー数が増えてこない。時期によってはキャッシュの数が全然増えない。外国人による設置もあまりないようなのだ。
私はこれもいかん、と思っている。たとえ外国人の私 (純粋に『バケーション』ではないとはいえ外国人だ) が燃料棒を差し込んだとしても、核分裂がある一定以上に増えなければいけないと思う。そんなわけで、ちょっと現地GBの方々には差し出がましいと思っても、今回数を増やさずにはいられなかった。秋田も同様である。また今後も、おそらく2、3年は同じようにこれらの地で増やしていくのに加担すると思う。
おそらく日本のジオキャッシング黎明期に、元祖GBの方々が感じていたことも、同じようなことなのではないだろうか。私が知っているのは2007年以降の状況で、決して完全な黎明期とはいえないのだが、いまに比べれば (前に書いたが) 始めた時点で「この遊び、何が面白いんだ?」と思ってしまうような状況であった。それがこんにちの『ジオキャッシング天国』になったのは、やはり黎明期の元祖GB (そして外国人『バケーション』設置者) の方々が燃料棒を挿し込んでくれたおかげである。そして彼らはこんにちの『ジオキャッシング天国」の状況をみて、我々が理解し得ないような悦びを感じているのではないかと思う。
