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出典: Tariki

デジタルでダメになる私

後ろにある滑走路ほど役に立たないものはない。というのはパイロットの信条だそうだが、持って行かなかったレンズ(カメラ・フィルム)で写真は撮れない、というのが私の信条だ。

だから今回の旅行も、デジタル2台にフィルム3台を持って行った。旅先で「ずいぶんカメラありますね」と指摘されて数えてみて、はじめて5台あることに気づいた(実はこれに携帯のおまけカメラが加わるが、買ってから2枚くらいしか撮ったことがないので除外してよいだろう)。そういえば肩が凝る。

嫁もコンパクトデジタルカメラを1台持っていった(さらに携帯のおまけカメラが1台加わる)。 とあるロープウェイで2人で別々のカメラを構えていたら、すれ違ったゴンドラから「2人で2台のカメラ……」というせりふが聞こえてきたが、残念でした。2人で7台です(笑)。

デジタルは、ほとんどこれ1台で用が足りるのではないか、というFujifilmのFinePix S5 proである。デジタルで世界で唯一(受光素子のおかげだが)、ネガフィルム並みにラチチュードが広い。今回も、うっかり日中シンクロを炊くときに露出補正を忘れて2段くらい飛んだ写真があったが、なんとか救えた。JPEGでは真っ白け、白い服などべったりになっているが、RAW現像してみると服のしわや汚れまで出現して、使い物になった。だからうっとうしいと思っても、RAW + JPEG記録は(特に旅先・失敗できない仕事では)やめられない。

これに18-50(換算27-75)/2.8通しという便利なレンズ(といってもほとんど両端しか使わないのだが(笑))、あと暗いがVRがついた55-200mm (換算83-300mm)という、安物の飛行機用レンズ(糞レンズとよんでいるが、なかなかの描写である)を持参した。うっかり置いてくるのを忘れた50/1.4というAFレンズもかばんに入っているのを旅先で発見したが、これはまったく使っていない。こんなものを肥やしにするのなら、50/1.4のZeiss ZFレンズでも持参すればよかった(デジタルなら75mmとして、フィルムなら50mmとして使える)。

これにGR Digitalが加わる。実は28mm端は上記レンズでもカバーできているのだが、やはり『身構えさせないで気軽に撮れる』カメラは必要だ。

さてこの2台で旅行用カメラは終わり、となりそうなものだが、実は一眼ではNikon F2(これは85/1.4を付けっぱなし)、コンパクト広角ではGR1vを持参した。間もなく現像が終了するコダクローム(KR)のためだけにである。まったく同じ(ような)セットをデジタルとフィルムで持参する、というのも馬鹿みたいであるが、KRで世界遺産(それも廃墟系)を撮ったときのしびれるような発色を体験すると、少しでも多く遺しておきたい。

さらにHasselblad SWCが加わる。上下左右換算21mmという正方形画面は、広大な場所を撮るのに適している。この読みは当たらなくもなかったのだが、下手くそなせいか実はそれほど活かしきれていない(横長または縦長28mm程度で十分な局面が多かった)。

まあそんなわけで、フィルムは押さえというか、ここぞというときに一発、というつもりだったので、旅行前半(昆明~麗江~シャングリラ)を中心に、KRを7本ほど、120ロールフィルムを10本ほどしか持参しなかった。少ない数でも空港の検査と戦うのは一緒ではある(透明袋に入れて手荷物にしてさらにハンドインスペクションを要求する)。飛行機での移動が5回、その他KCRという広州-香港間の鉄道でもX線検査があったが、やはり本数が少ないと楽である。ちなみに中国は国内線の検査はほとんど目視でOK、国際線に乗るときは丁寧に一本ずつ調べられたがまあそれほど戦っていない。KCRの入出国(飛行機と異なりX線検査はどちらも大陸側にあった)は、銃器などの密輸をみつけるためなのだろうか、袋を持って金属探知をくぐればOKだよ、といわれた。911テロ以降、空港でフィルムを巡って戦うのは、いつも精神的に負担になるので、2日に1回ほどに飛行機による移動が入るのは疲れるかな、とは思ったが、(少なくとも国内線は)検査が穏やかな国でよかった。

11日間の撮影枚数であるが、デジタル一眼では1500ショットも撮ってしまった。デジタルコンパクト広角は、普段使いのメモカメラでもあるので、かなりの撮影枚数になるかと思ったが1000ショット程度であった。後者は食事が美味しそうに写る『食事用カメラ』なので、 目に付く食べ物・食材はすべて記録していたが、それだけで250ショットである。対してフィルムはKRが2台合わせて7本 = 200ショット程度、120ロールは6本 = 70ショット弱である。

今回は合計で3000ショット弱、フィルムにしたら80本以上になったわけだが(したがって単純には8万円以上のフィルム・現像代がかかる)、単純にそうは計算できない。やはりデジタルならでの気軽さで、余計なものをばんばん撮ってしまう。後から後悔することになるのだが、たまには使えるショットが混ざっていたりする。反面、フィルムで撮るときほど考えて撮らないので、全体にダメ写真が多い。

歩留まりでいえば、デジタルの2500ショットのうち加工なりRAW現像なりにこぎつけたのがわずか150ショットあまり、約20分の1である(さらにしばらく見返して、紙焼は1/3程度に減ると思う)。フィルムは120で70ショットのうち1/4が、KRで200ショットのうち1/3が本スキャン・レタッチまでこぎつけたので、やはりフィルムとデジタルでは撮るときの心構えが違うのだろうか。

いずれにしてもこんな心構えでは、フィルムで撮るときのダメ率も上がりそうで怖い。

ところで旅先でも、これだけ機材を持っていけば、やはりホテルやバスに置いてきて後悔する機材がある。珍しい飛行機がいっぱいの飛行場で飛行機用望遠レンズを預け荷物に入れた後だったり、デジタルでばんばん撮りたい観光地でフィルム2台しか持ってなかったり。

やはり持って行かなかった機材で写真は撮れないのだ。