Tech:zoomh2-rorandr09

出典: Tariki

ZOOM H2/Roland R-09

小学生から中学生にかけて、そのころの理系な子どもなら誰でもハマりそうな『生録』に凝った。幸い、我が家にはオーディオが人並み程度に好きで、仕事でポータブル録音機器を使う親父がいたから、うちにはSONYの生録デッキなどというものがあった。中学へ自転車で通う道々、その生録デッキを自転車のかごに入れ(単1 6本駆動だと記憶している)、密閉型ヘッドホンでSONY ウォークマンが出てくる以前からアウトドアでステレオオーディオを楽しんでいたのは余談である。

なおこのSONYの生録デッキ、なんと2008年の現在も、妹がときどき仕事のため借り出して現役で動いているという。昔の機械は丈夫だ。SONYタイマーなど無縁の時代である。

さて最近、Hi-Fi録音するというと困る状況が続いていた。カセットテープの時代が終焉し、DATなどというよい物が出てきたにもかかわらず、あれは普及に失敗したとみて間違いないだろう。つまり、非圧縮でメディアが高いよりは、糞みたいな音質でも小型で安価なメディアのほうが好まれる。DATを滅ぼしたのはMDであると思う。まあMDだって単純にS/Nだけみればカセットテープよりは音がよい、ともいえるのだが、いくら低歪であっても非可逆圧縮は(特にノイズ系の『情報量が多い』音源では)色が付いちゃってよくない。

まあ私は趣味で音楽制作などをしているからまだ、HDD MTRなどを持ち出せているから恵まれている方かもしれない。しかしちょっとライブの録音をするのに、ちょっとした画板くらいの大きさがあり4、5kgもあるMTRを持っていくのは気が引ける。

そんな2007年ころ、ふと気づくと(別項にも書いたが携帯電話様様のおかげである) フラッシュメモリデバイスが安くなり、SDレコーダなどというものが出現している。これを利用したソリッドステートMTRも実は入手してあるのだが、あまり使い込んでいないのでまた別の機会に。

ともかく、2chで録音がHi-Fiにできる。しかもHDDRなどと違って、稼動部分がないので、ドラムなど音ではなく振動が掛かる状況でも安心だ(信じられないと思うが、光ディスク系のMDですらドラムセットの近くに置くと楽々録音エラーになる)。

なお私は、再生専用は結構早くからソリッドステート系のオーディオ機器を使っていた。いわゆるミュージックプレーヤのはしりだが、1990年代終わりころに誰もMP3プレーヤなど使っていなかった時代には、小容量のフラッシュメモリに音楽を時間かけてエンコード・転送し、「そんなん手間掛けて何がうれしいの?」とひとに笑われていた時代である。おまけに無印MP3が再生できる単体器というのも、限りなくクロに近い灰色であった。そういう機種のいくつかにはローファイの録音機能がついていたが、これは同時期にあまた出てきた『モノラルの会議録音専用』ソリッドステートレコーダと同様である(会議こそダイナミックレンジが広いのでHi-Fiステレオ録音が必要なのだが)。

ということで、仕事で (音響関係の実験に) これら機材を導入しがてら、プライベートでも多用してみることにした。

ZOOM H2

こちらはまず、あまり使っていない。後述のRoland R-09と同時に入手し、アナログ系のが弱いと思った。

形状は、ロカビリーなどのステージで使うような古いダイナミックマイクの形状をしている。ここはおしゃれである。ただしwebなどで写真でみるような高級感はなく、いわば『古いダイナミックマイクの実物大食玩』といった質感があまりよくない。

本体機能としては、録音済みのものをある程度加工(ノーマライズしたり分割したり再エンコードしたり)できるのだが、はっきりいってこれらの機能はあまりありがたくない。そりゃMP3圧縮がPCでも重くて、メディアも数十MBで、という時代ならばありがたかっただろうが、動画がソリッドステート記録できPCでリアルタイム加工できるこの時代に、どんなに長時間とりためても転送は一瞬だし、音声の加工なぞきょうびのモンスターに進化したPCにとってはidle processより軽い(いやそれは言いすぎだ)。

特筆すべきは、メトロノームやチューナという (メトロノームは「かつ、かつ」タイプでなく「ぴっ、ぴっ」タイプなのでドラマーにはほとんどありがたくない(笑))機能がついていることだ。さすがギターのエフェクタメーカといえよう。

したがって、この機種は楽器筋の販売店でないと売っていないことが多い。まあきょうびのオーディオマニアは自分で録音するということもあまりないだろうから、オーディオ筋の販売店 (つまり通常の電器屋) で他社のモノを店頭入手できるとも思えないが。

Roland R-09

こちらも楽器メーカである。といってもRoland DGなんかは知る人ぞ知る3次元プロッタとかも製造しているので、逆にPCショップなどでは扱っているかもしれない。

こちらはZOOMに比べ、音はよい(あくまで私の主観)が操作性が×である。またS/Nという観点では、ややホワイトノイズが多いか、という感じである。

またMP3圧縮についても、妙な癖がある。ジェット機の爆音を録音したときなど、音が左右に(ロータリースピーカのエフェクトをかけたみたいに)飛びまくってしまった。これを無圧縮で録らなかったのは私のミスであるが、いずれにしても音楽より情報量が多いノイズ系のものをこの手の機器 (プロセッサの計算能力があまりない)で録音しようというとき、非可逆圧縮は避けてPCでエンコードしたほうがよいだろう。

操作性について悪い点を挙げておく。いっておくが、その他の点ではほとんど満足しているから悪い点だけを書いて、購入を検討しているひとの情報としようということで、全般的にはいまこの機器を上回るものに買い換えようとかいう不満はない (そりゃ金があり余ってればSONYのPCM-D1は欲しいけどさ)。

まず表示がみにくい。バックライト付き白黒液晶は、明るすぎる炎天下ではほとんど字が読めない。ただし一番重要な、録音中かポーズ中かというのは明るいLEDで示してくれるので、致命的な録音ミスをしたことはない (しかし暗いところでは逆にこのランプが目立ちすぎる)。録音動作に入りやすいというのは (非常に細かいことだが) RECボタン1回押しでスタンバイの後、再生ボタンでもRECボタンでもスタートできる (SONYのテープデッキ方式) というあたりにも一因がある。とにかく、録音チャンスを逃すことが一番致命的であることを熟知しているメーカの作である。

サイドのスイッチも押しづらく、バックのスライドスイッチもどれがどれだか区別がつきにくい。これに該当するのでいちばん困るのはPOWER (左にあるボッチである。しかも長押ししないといけない) で、左の録音レベル上げ下げ、右の再生レベル上げ下げも操作しにくい。バックにはAGCのオン・オフという重要なスイッチがあるので、ぱっとみで他の3つ(LOW CUT、外部マイクモードなど)と混同してしまう。

なおこのような形状であるから、逆にポケットに入れておいたら勝手にボタンが押されて、という事故は皆無である。右脇にロックスイッチ(機械式のスライドスイッチなのでよい)があるが、なくても誤操作はあまりない。どうせこれだけ押しにくいスイッチを多数付けておくなら、録音ビット数や無圧縮・非可逆圧縮の切り替えなども機械式スイッチにして欲しかった。

機能的な点では、電源ONから起動がやや遅い。またメニューが使いにくい。AGCはON/OFFしかできず、昔のレコーダみたいにスピーチモード(AGCの時定数が速い)・音楽モード(同遅い)のようなものがないのは、ダイナミックレンジに余裕があるからだろうか。音楽などレベル調整が事前にできない場合は、小さめに録っておくかAGCのみで困ったことはないのだが、できればリミッタ(基本的にマニュアルレベル調整だが過大入力だけコンプレッサを掛けてくれる)があってもよいように思う。

構造的には、ややSDカードの接触に難があるようで、これが原因で録音したものが失われたことが2度ほどある。また電池ボックスとSDの口が兼用で (SDは簡単に外せ、ロックを外さないと電池は落ちないように配慮されているが)、このことも接触部の脆弱性に関与しているかもしれない。

他の余計な機能はあまり使い込んでいないが、逆に余計な機能はほとんどない(ないと思う。そのくらい他の機能は使っていない)。

なおこれはソリッドステートレコーダ全般にいえる (デジカメもそうだ) が、USB接続時に (USB removable deviceの規格では無理かも) 時間を簡単に1秒以下までsyncしてくれる機能があるとよい。デジタル録音できる機器では時刻がほとんど狂わないため、実験等の記録装置としての役割が期待できるのだ。せめてJJY (昔の音声の) でもあれば、冒頭に録音して時刻を合わせておけるのにね。

電池のもちは、よくもなく悪くもなく、というくらい。単3アルカリだと4時間くらいもつのかな? 私は主にeneloopで使っているのでこの半分くらいのように思えるが、単3なので万一の充電忘れでも旅先でも困るということはない。機械式のレコーダと違って、スタンバイ状態でも録音状態でもあまり電池の持ちは違わない(エンコーダも電力は喰うが、モータほど差はない)。ただし航空無線の録音などに使っているとき (配線を変更する余裕がないとき)、ハードウェアでthroughするスイッチがないため、聴きたいだけのとき(録音の必要がないとき)でもスタンバイにしておかなければならないのはちょっと困る。

最後に音質であるが、録音したものの解像感はまあまあかな、と思う。これは内蔵マイクが安っちいせいもあると思える。再生したときは、その辺のMP3プレーヤに比べればぶっとい音がでるので、アンプ・電源はしっかりしていると思う。まさか再生だけってことはないと思うので、録音もこれに準ずる品質であると思ってよい。