Ev:platinum
出典: Tariki
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プラチナ・マメシバ・Song to Fly
- (2007/10/15) 三つまとめて★★★★☆
- プラチナ:
- 歌: 坂本真綾
- 作曲・編曲・プロデュース: 菅野よう子
- 1999年
- ビクターエンタテインメント
- マメシバ:
- 歌: 坂本真綾
- 作曲・編曲・プロデュース: 菅野よう子
- 2000年
- ビクターエンタテインメント
- Song to Fly:
- 菅野よう子
- 1998年
- ビクターエンタテインメント
プラチナは声優の坂本真綾さんの歌になる、アニメの主題歌である。同じくマメシバは坂本真綾さんのシングル、この2作の作曲・編曲・プロデュースをしている菅野ようこさんのソロアルバムがSong to Flyである。ここでは一緒くたに論じる。
アニメ声優の歌
アニメ声優の歌というと、副業というか、ヲタク御用達という印象があった。
数年前のことだが、ドラムのサブ師匠であるYさんが、Mといういわゆるアニメ声優のバックバンドの仕事を請けた。Mというアニメ声優 (当時知らなかったが) は、いわゆるアイドルアニメ声優であり、ルックスもそこそこであるが、結構アイドルというには(アイドル歌手に比べたら)トウが立っている(失礼)。プロモビデオもみせてもらったが、歌にあわせて口パクで、山下公園のファンシーなショップで意味もなくMが歩き回るという内容だ。70年代アイドルが現代の技術・作法でプロモビデオを作ったらこうなるか、という感じであった。そもそもM (あだ名っぽい名前だ) というニックネームがアレだ。
面白いので、Yさんの誘いに乗ってMのライブに、仲間内4、5人で押しかけてみた。このバンドのバンマスをやっていたのがキーボーディストのSさんであった。彼もまあ軽い知り合いであるのだが、渋いジャズ・ロックを演奏する実力派ミュージシャンでありながら結構そっち方面が好きそうで(失礼)、ノリノリでアレンジなどをやっていたということである。Yさんのご招待なのであるが、実はこのライブはMのDVDだかCDを買って応募しないと入れないという、Mのファンにとってみたらうらやましい状況で、Mにまったく興味のない男女が押しかけたわけである。
ともかくも、そのライブ会場の空気は、我々には未体験のものであった。一見してわかるヲタク客ばっかり、平均BMIは30あろうか。最前列に500mmくらいの望遠レンズ(笑)をでんと設置しているヲタもいる。一緒に踊りながら歌ってしまうヲタもいる。歌に合わせて野太い声で「M~」なる合いの手(?)も飛ぶ。そういう世界が実在するとは思わなかった(笑)。
いやはや、という感じで終演後、楽屋を訪ねてYさんやSさんと雑談していると、Mが挨拶にくる。「どうもありがとうございましたー」。実に誠実で礼儀正しい。Yさんにきいてみても、かなり気遣いがあるひとで、よく練習もしているらしい。
アイドル声優が歌のCDを出すというのは、結構本人(事務所も?)必死なのだなあ、と思った。と同時に仕事のクォリティや意欲に好感を持った。顔が可愛いだけのアイドル歌手が大ヒットが約束された上でやっつけ仕事のCDを出したり、映画俳優が余業で出すのとは全然違った意欲の傾け方である。悪く言うと、超有名人というのが少ない声優の世界である、歌で大ヒットが飛べばお仕事も増えるのだろう。また歌は本業でなくとも、声をコントロールするのはプロである、歌うことが人一倍好きなこともあるだろう。しかし下手をしたらアマチュアバンドと五十歩百歩の規模である。バックは実力派プロ(でも無名)だし、金はそれなりに掛かっているといってもアイドル歌手とは桁が違う。アマチュアというのは、金を払ってでも聴いてもらいたいものだが、その点はまったく同じだ。
プラチナ
流行っているときと全然関係ない最近、プラチナという曲を聴いた。かなり上質の歌謡曲である。調べると、某アニメの主題歌であり、『アイドル声優』が歌っているということがわかった。そこで思い出したのが前記の事例である。
ただしアニメ声優がアニメのテーマ曲を歌うというのはあまり一般的でないと思う (歌っている坂本真綾というのはそのアニメでは声の出演をしていないらしい)。宇宙戦艦ヤマトのささきいさお、ガッチャマンの子門真人など(古い)アニメソング御用達の歌手の例を思い出してもらえば明らかだ。
坂本真綾(名前がまたアレである。本名なのか知らないが、結構萌え系? である)というのは歌手としてかなり本気で活動しているようである。声優なので声の質も発声方法ももちろん良いが、歌も上手い。
また曲も素晴らしい。歌謡曲としては音域の広さがちょっといかがかと思うが (歌が下手なアイドルの場合、曲は1オクターブ程度に収めないといけない。素人にも歌えるのでそれがまたカラオケで流行る原因にもなるのだが)、広い声域を活かした変化のあるメロディーラインに、自然だが何度も転調する分散和音ばりばりの曲である。アレンジもクラシック楽器 (サンプリングかも) など適当に取り入れ、演奏もバックのリズム体が素晴らしい。特にベースが淡々と弾いているようであるが後半になるとよく動くし、黒っぽい。ミュージシャン(残念ながらクレジットがない)が実力派のようである。前出のYさんやSさんもそうなのだが、間違いなく演奏のテクニックは一流だが(失礼ながら)有名になり得ていない実力派ミュージシャンがバックバンドに集っているのだろう。もったいないことだ。
ちなみに坂本真綾さんというのは、声優 (または歌手をやっている声優) の中ではかなりモンスターに有名なひとらしい。それでもライブなどは大半が学園祭とか、前記のような小規模なものみたいだし、この作品もアニメのテーマ曲ということだからそれなりにヒットはしただろうが (最高オリコン21位らしい)、誰でも知っている大ヒットというわけではない。
この作品に問題があるとすれば、作品のクォリティに比例した大ヒットをしなかったことだ。歌謡曲は曲が良かったり、歌が良かったりして大ヒットになるものではない。この作品も、素晴らしい名曲・アレンジに素晴らしい演奏がついて、良い声質の歌手が上手に歌っているが、残念ながら多くの歌謡曲リスナー(何が良いか選べて『聴けて』いないのだからリスナーともいい難いが)はそれで購入して聴く選択をしなかったということだ。だが私が自分で聴く分には、ヒットしたかどうか (世に広く知られているかどうか) は関係ない。幸せなことだ。
マメシバ
次に作曲・編曲と歌が同じ組み合わせ (菅野よう子-坂本真綾) を探して買ってみた。マメシバという曲である。これまた素晴らしい。アコースティックな感じのバックバンドがやはり良い仕事をしている。良い曲良い編曲を上手いバンドが演奏良い声で良い発声で上手い歌、というまでは前項と同じなので略。
特筆すべきはこの曲、さらっと視聴しただけではそれほど印象に残らなかったのだが、何十回か聴いたら上記『プラチナ』と評価が逆転したことだ。実際、正反対の印象である。定説どおりの盛り上がり方を無視した叙情俳句のようなメロディーライン、転調しまくっているにもかかわらず8小説循環じゃねーのと思わせる起承転結がない構成 (実際Bメロ繰り返し2回目のバックコーラスのラインは1回目のメロのラインと同じだ(笑))、ありふれた詩語をちりばめた歌詞、これらが噛めば唾液で甘みが出てくる白いパンのように、繰り返し聴くと頭の中に流れ始める。
もうひとつは(上記と関連あるが)作詞が、歌っている坂本真綾さんであるということである。印税稼いでるな。じゃなくて。気の利いた高校生とか大学生ならこのくらい書けるかな、というありがちなストーリとありふれた言葉ではあるが、その中で主人公は自分を、ちびっこいが気丈で『君』(『彼』)の助けになる (- と主人公は思っている) マメシバに例え、『私』を「あたし」と発音しているあたりで、自分を定義づけるキャラクタ作りを感じる。これもアニメソングだそうで、依頼が先にあったのか詩が先にあったのかしらないが、主人公は坂本真綾さん本人であるとすれば、なるほど人となりがよくわかる歌詞と歌である。ラブソングともそうでないとも取れるのも上手い。『君』に対する呼びかけの歌詞が、自分に対する決意の再確認の部分で『彼』という呼称に変わっているのも、メタ世界の観客に向かって説明的に訴えかける舞台演劇っぽくてよい。
CDの購入前にプロモビデオがyoutubeにあったので観てみた。6分の歌謡曲というのは短いほうではないが、6分間ただひたすら走るだけのビデオである。走っているのに真面目に口パクしている(笑)。走りながら口パクしているからすげー、というわけではないが、適当に撮影してよく撮れたシーンだけを編集したわけではないことではわかる。これも作る側の誠意なんだろうか。ちなみにロケは渋谷~多摩川園あたりだろうか、途中1、2箇所を除いてすべてよく知っている景色ばかりで、個人的に親近感があった。
声優の歌はさすがだと思ったのは、七色の声を使い分けている。他の曲(それほど聴いたわけではないが)では『声の綺麗なお姉さん』的側面しか聴かせていないが、この曲は『声の綺麗な(略)』『ロックシンガーっぽい節回し』『地声でストレート』『いまふう女の子のカラオケ歌いの喉を絞めて苦しそうに張り上げた声』などがころころ変わって面白い。歌手としてはコントロールできているのか知らないが。ただしパンチインの前後で違う声質になってしまったりしている(突然声質が変わる)のはご愛嬌(笑)。
Song to Fly
菅野よう子さんは私と同い年のCM作曲家であるようだ。CM作曲家というのは、短い時間で印象に残るフレーズを作るのが得意なのだろう。期待してアルバムを買ってみた。
ところが(といっては失礼だが)。やはり自分名義で出しているアルバム(ちなみに多作なようだが、自分名義はこの1枚しかない)では、自分の趣味を前面に押し出してしまうためだろうか、いまひとつであった。何が言いたいのかよくわからない。上記の歌謡曲でみせたような、複雑で入り組んでいるがわかりやすい曲でもない。ある種の賛美歌のようだが、作風も私の耳には合わない。



