Ev:capricorn one
出典: Tariki
映画(DVD) カプリコン1
- (mixi review: 2006/ 8/31) ★★★★☆
- 1980/2000(DVD)
- ピーター・ハイアムズ
- エリオット・グルード
スペースシャトルの打ち上げが延期になったのでつい、久々に宇宙モノの映画を観たくなって引っ張り出してしまった。
この映画、私が小学生(と記憶しているのだが)のときに公開になって、リアルタイムで観ている。ごく最近になってDVDで買い直した。まあ子供の頃観た映画ってしょぼくても印象に残っているからな、という程度で買ったのだが、観てびっくりした。
ハリウッドの70年代映画というのは、この手のインパクトがあるように思う。手を変え品を変えいろいろなパニック映画のネタを出してくるのはいまも昔も変わらないが、映画のヒットの後定番として定着するようなネタがあったのだ。例えばブレーンストーミングあるいはディベートの有名なネタで『高層ビル火災からの救助』という問題があるが、『タワーリング・インフェルノ』(これも最近レンタルで借りて観た)がその大元だったのか、と認識を新たにした。他にもジョーズ、エクソシスト(これはパニックでもないけどさ)、列車大暴走系、航空機パニック系(これは毎年シリーズ化されている) などなど、その頃のハリウッド映画はネタに力があった。
その点、90年代以降のハリウッド映画は、竜巻、隕石が地球に落下(これは同時期にネタがかち合ったことがあった)、よくできたプロットは必ずマイケル・クライトン原作、など、もうネタ切れなんだろうか、と思ってしまう。
さて本作に話を戻すと、何といってもNASA全面協力の打ち上げシーンはリアリティがある。最近ではシャトル打ち上げなどはネット中継で一部始終が観られるようになったが、打ち上げやロケット運用の手順(システム)はあまりアポロと変わらないらしい。その他の科学考証もそれなりになされており (ただし乗組員が家族と会話するシーンはいただけない。計算すると往復に10分くらい間が開いてしまうはずだが(笑))、宇宙計画が全然進歩していない(っていうことはないけど69年に月着陸だったのだから77年には火星、と考えたのかなあ)いまでもリアリティをもって観ることができる。
DVDに収められた制作ノートを読んでまたびっくりした。この映画、そもそもアポロ計画への皮肉などではなく、ベトナム戦争でアメリカが『強いアメリカ』『正義』を演出するご都合映像のみを放出した、という点から監督のピーター・ハイアムズが着想を得たというのだ。ううむ、深い。近年になって、湾岸戦争やアフガン侵攻などで一般人にもそういった政府とマスコミの共同メイキング・やらせは知れ渡っているが、そのことを70年代初頭に問題視したハイアムズは偉い。
さらに、最初に制作を試みたのが72年というから、アポロ計画が終焉した年なのだが、そのころ非現実的だった『政府による陰謀』というテーマが、その後ウォーターゲート事件で一挙にリアリティのあるものとなってしまい、77年に本作を制作するに至ったというから、この点でもハイアムズの先見の明は優れている。
ちなみにNASAには当初、ストーリを隠して協力を求めたらしいが、『政府の陰謀』というプロットが明らかになった途端、NASAは協力をやめたという(当たり前だと思う(笑))。NASAのロゴもばんばん出てくるわけで、よく訴訟にならなかったな、とも思う。
以下spoiler注意。
特撮も、CGがあれば簡単にできるのに、などというシーンを手作りで丁寧に編集していて素晴らしい。特に宇宙飛行士が脱出のためビジネスジェットを奪って飛び立つシーン、DVDでコマ送りで観てみると(こんなことを暴かれるのが時代を超えて生き延びた映画の宿命だ (笑))、実に危険なスタントシーンをいくつも編集して作っているのがわかる。
プロットで多少分かりにくかったのが、どうして突然、着水地点に向かう3人の飛行士が戻されたのか、ということである。説明がないので『計画当初から消すつもりだった』のかと思ったが、拉致直後に計画を打ち明けるくだりではっきりと「着陸船のプログラムをいじり着水地点をずらす」とあるので (着陸船は自動で戻すつもりだった: だから生命維持装置なのだろう)、燃え尽きたのは不慮の事故だし、それ以前までは本当に生きて返すつもりだったのだろう、ということがわかった (したがって字幕の日本語訳の不親切さもある)。ただしこれ、当初から消すつもりというほうがリアリティがある。帰還したのに火星の石も写真もない、飛行士の以後の一生のうちには真実を暴露されかねない、というのでは、リアリティに欠けるだろう。わざとどちらとでも取れる説明不足にしてあるのかもしれない。
何にせよ、『人類は月に行っていない』などというおふざけTV番組 (制作屋はまさか本当に信じていないはずだ) を真に受けるようなひと (その手のおバカwebページを見かけたことがある) には、是非一回この映画を観て欲しいものだ。そう、すべてはこの映画に源をたどるネタなのだ。

